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いつまでだって待てる。一年でも二年でも。なんなら十年単位でも我慢する。するしない、で揉めて別れるぐらいなら、ずっとセックスレスでもいいと思った。
有はベッドから下りた。朝食の準備をしにキッチンに行くことにした。ドアを開け廊下に出ようとすると、背後から声をかけられる。
「おまえの方だよ。覚悟ができていないのは」
意味不明な科白だった。とっくに有は覚悟を決めていた。男同士のセックスについて、ネットや本で調べたし、嫌悪感を覚えながらも、ゲイのAV動画を鑑賞したのだ。
――俺のせいにするのかよ。
有はドアを開けたまま、亘の部屋を後にした。苛立ちにまかせてドアを閉めたら大きな音が立ってしまう。
今日は外でデートをするのだ。険悪な雰囲気を引きずりたくなかった。
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