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亘が有のコップを奪うようにして取って、近くのゴミ箱に捨てた。
「ありがとう」
亘の気遣いが嬉しい。面映ゆくなって有は俯いた。
神社の鳥居を抜けて、家路を辿る。街灯の光のお陰で、他に道を通る人がいないとうことが分かる。ふたりは手を繋いで歩いた。
「元旦にお付き合いスタートか。良い年になりそうだな」
「そうだね」
有にはまだ現実感がなかった。でも、亘の手が震えていることに気が付いてしまった。触れた部分が汗ばんでいることにも。
「わたる」
だから、自分も勇気を出して言わなければ。
「なんだ?」
亘が照れたように笑った。自分が「わたる」と呼んだからかもしれない。なんなんだよ、この愛おしさは、と体が沸騰しそうになった。
「俺も大好きだ」了
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