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how to spend the holidays
映画とランチのデートを終えたあと、二人は近所のスーパーで夕飯の食材を買って家路についた。もう夕方の五時を過ぎていた。
家に帰ってすぐ、手洗いうがいを済ませて、有は食事の支度にとりかかった。今日は有が夕食をつくる当番だ。
メニューは焼き魚と肉じゃがと野菜サラダだ。
「なにか手伝う?」
ベランダに干していた洗濯物を取り込みながら、亘が聞いてくる。カーテンを開けた窓からは夕日が射してきて、目に眩しい。
「いいよ。今日は簡単なメニューだし」
有は亘の申し出を断った。
炊事洗濯は高校のころから一人でやっている。手伝ってくれようとする気持ちは有難いが、自分のペースを乱されるのは嫌だった。
「ふたりで作ったほうが早く終わるだろ」
有が遠慮していると思ったようだ。
「洗濯ものを畳んだら手伝うよ」
亘はリビングのソファに座って、洋服やタオルを畳み始めた。
「じゃあ、お願い」
ふたりでシステムキッチンに並んで料理をする光景を思い浮かべてみる。共同作業も悪くない、と思い直した。
「その代わり家賃値下げして?」
亘がとつぜんふざけてくる。まるで笑いをとろうとするように。
彼も今朝のことを気にしているのかもしれない。
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