Lovers

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 亘の顔が近づいてくる。有は目を閉じて、彼からのキスを受けた。頬と唇に一回ずつ。平日の朝にふさわしい、軽く触れるだけのキスだ。  ――平日の夜も休日も、こんなキスだけど。  目下、有の不満はこれだった。友達同士でふざけてするような軽いキスしかしていない。それ以上のことは何ひとつ、亘とは未経験なのだ。付き合って七カ月も経つというのに。 「歯磨き終わったんなら、早くそこ退いて」  ぐいぐいと手で肩を押され、有は洗面台の前から退散させられる。洗面所兼脱衣所を出て、有はキッチンに向かった。もう朝の、恋人同士のひと時は終わってしまった。あとは朝食の準備をして、ふたりで食べて、お互いスーツに着替えて、それぞれ自分の会社に出勤する。有は地下鉄の駅へ、亘はJRの最寄り駅へ歩いて向かうのだ。  有も亘も、男と付き合うのはお互いが初めてだ。だからなのか。七カ月付き合っても、キスから先に行けない。亘がその気になってくれないのだ。  ――俺はいつでもOKだけどな。  ちなみに、抱く側でも抱かれる側でも抵抗感はない。彼とセックスできるならどちらでも。亘のほうが体格がいいし背も高いが。     
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