anxiety

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 そういうわけで、ここ一か月は、一緒にくらしているのに平日は一言二言しか会話できないこともザラだった。  二十二時少し前にマンションに帰り着いた有は、一人分の夕食を作った。玉ねぎと豚肉を炒めて焼き肉のたれで味付けし、それをご飯に載せて豚丼にした。自分しか食べないとなると、作るのが面倒になる。亘の分を作るときは、最低でも主菜一品、副菜二品は作るというのに。 今朝家を出るとき、亘から今日も飲んでくると言われていた。深夜に帰ってきたら、顔を合わせるのも難しい。有はいつも一時過ぎには就寝していた。 「今日は帰ってくるまで起きてよう」  明日は土曜日だ。待ちに待ったふたりの休日。  自分の声が、がらんとしたリビングにむなしく木霊した。豚丼をひとくち食べると、咀嚼する音が鼓膜に響く。見たい番組もなかったが、音を求めてテレビをつけた。日ごろ滅多に見ないバラエティ番組が映り、お笑い芸人の甲高い笑い声が流れてくる。MCに話を振られた女性タレントがノリよく話し出した。品はないがかわいい子だと思った。 「タイプの子がいたら嫌だなあ」  亘が参加している宴席のメンバーはどんな面子なのだろう。気になる。 アパレル業界は女性の割合が高い。彼女らはきっと、身だしなみに気を遣っていて、美容に関心があって、女子力が高いのだろう。     
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