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ポカリスエットを持って亘の部屋に戻ると、彼はベッドに体を起こしていた。気怠そうに短髪の頭をぼりぼり掻いている。
有が亘にペットボトルを手渡すと、彼は自虐的な笑みを浮かべて呟いた。
「昨日からダメダメな姿さらしてるな。幻滅した?」
「しないよ。こんなことぐらいで」
「ならいいけど」
亘がほっとしたように笑った。
その表情が可愛いと思いつつも、有は彼の言動にひっかかりを覚えていた。
――やっぱり俺に、色々気を遣ってるんだ。
部屋を汚さないようにしたり、醜態を見せないように酒量をセーブしたり。
休日もそうだ。土曜日は外に出かけてデートして、日曜日は食材の買い出しや家の掃除を一緒にしてくれていたが、本当は部屋でダラダラしていたかったのかもしれない。
「朝ごはんは無理そうだな。シジミの味噌汁作ったら飲む?」
「いや、いい。これで充分」
亘がスポーツドリンクのキャップを開け、ひと口飲んだ。
「それよりさ、隣に座ってよ」
言うが早いか、亘が腕を伸ばしてきて、有の手首をぎゅっと掴んだ。
亘の横に足を伸ばして座ったとたん、彼は有の太腿に頭を載せてきた。
「ちょっくすぐったい」
じっとしてくれればいいのに、彼はわざと頭をぐりぐりと押し付けてくるのだ。
「本当に幻滅してない? 部屋もこんなだし」
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