the 15th of March

5/13

693人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
「そうだよ。でも有は特別。いつも一緒にいたい。――そうだ、部屋を一緒にしないか」  いいことを思いついたように、亘が弾んだ声で言う。 「もうひとつ部屋があるじゃん。倉庫みたいになってるけど。そこを俺たちの寝室にしよう。で、この部屋を物置にすればいい」  亘が床を指さした。 「別にいいけど――時間かかるよ」  寝室が一緒になるのは嬉しい。朝と夜、確実に顔を見ることができる。毎朝起きてすぐに亘の顔にキスができる。 「今からやろう――あ、シジミの味噌汁飲んでからな」  ふたりはキッチンに移り、シジミの味噌汁を作ることにした。  有はシジミの砂抜き、亘は出汁をとる係だ。  ケトルに水を入れお湯を沸かし、耐熱ガラスのボウルに熱湯を注いだ。そのなかに、シジミを一気に入れる。 「え? そんなことしていいの? 砂抜きって塩水でやるんじゃないのか」  亘が驚いたように目を見開いた。 「熱湯でもできるよ。熱くて貝が驚くんだ、ほら」  言っている間に、貝が一斉に開いた。 「すごいな。よく知ってるな」  本当に感心したように褒められ、有はこそばゆくなった。 「伯母に教えてもらったやり方なんだ」 「あー伯母さんね」  亘の表情が一変した。皮肉るような、含みのある言い方をされ、有は気になった。     
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

693人が本棚に入れています
本棚に追加