693人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
「亘は、会ったことないよね。俺の伯母に」
有が高校を卒業してからは、伯母はここに一度も来ていない――はずだ。
「会ったことはないけど。たぶん、ここには来てるよ」
「え?」
「俺たちがいない間に」
予想外の亘の言葉に、有は息をのんだ。俄かに彼のいう事を信用できなかった。
「なんだよそれ。なんでそう思うんだ? 伯母には鍵も返してもらったし――」
「あ――今はその話やめておこう」
亘が話を一方的に打ち切った。
小鍋に入った出汁が沸騰して、細かい粒が浮いている。
「ついでに昼飯も作っちゃおうぜ。二日酔い、完璧に治った」
亘がいたずらっぽく笑った。
「やっぱり寝室は一緒が良いよな。恋人なんだから」
いきなり亘が体の向きを変え、有の頬にキスをしてくる。チュッと音がした。
素直に嬉しい。こういう接触はいくらでもしてほしい。
「本当にいいのかよ――プライバシーとかなくなるかも」
「別に、有に見られて困るものなんてない。疚しいこともしてないし」
亘が自信ありげに言い切った。
――セックスはする? しない?
聞いてしまいたかった。寝室が同じなのに今のままセックスレスを続けたら、生殺しじゃないかと思う。よけい我慢するのが辛くなりそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!