the 15th of March

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「亘は、会ったことないよね。俺の伯母に」  有が高校を卒業してからは、伯母はここに一度も来ていない――はずだ。 「会ったことはないけど。たぶん、ここには来てるよ」 「え?」 「俺たちがいない間に」  予想外の亘の言葉に、有は息をのんだ。俄かに彼のいう事を信用できなかった。 「なんだよそれ。なんでそう思うんだ? 伯母には鍵も返してもらったし――」 「あ――今はその話やめておこう」  亘が話を一方的に打ち切った。 小鍋に入った出汁が沸騰して、細かい粒が浮いている。 「ついでに昼飯も作っちゃおうぜ。二日酔い、完璧に治った」  亘がいたずらっぽく笑った。 「やっぱり寝室は一緒が良いよな。恋人なんだから」  いきなり亘が体の向きを変え、有の頬にキスをしてくる。チュッと音がした。  素直に嬉しい。こういう接触はいくらでもしてほしい。 「本当にいいのかよ――プライバシーとかなくなるかも」 「別に、有に見られて困るものなんてない。疚しいこともしてないし」  亘が自信ありげに言い切った。  ――セックスはする? しない?  聞いてしまいたかった。寝室が同じなのに今のままセックスレスを続けたら、生殺しじゃないかと思う。よけい我慢するのが辛くなりそうだ。     
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