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昼ごはんを食べたあと、ふたりは物置部屋と化した十畳のフローリングに足を踏み入れた。ドアを開けるのも久々だったが、その割に埃っぽくはなかった。部屋の半分は、段ボールで埋もれていた。高一のときに越してきてからというもの、滅多にこの部屋に入っていなかった。部屋の隅に、両親が生前使っていた桐箪笥が置かれている。
――部屋を片付ける良い機会かもしれない。
両親が亡くなって七年の月日が経った。そろそろ自分の気持ちにもケリをつけるときが来たのかもしれない。
背後にいる亘を見ると、彼はスマホをいじっていた。
向かって右側にある掃き出し窓まで歩くと、その近くにも、段ボールが並んでいる。一番高く積まれているのは、百七十センチの有の背丈ほどあった。一番低いのは、有の足元にある箱ひとつ。それをなんとなく開けようとすると、亘が「待って」と声をあげた。
「なんで」
「これを見てみろよ」
彼が有の横に立ち、スマホの画面を見せてくる。映し出されていたのは、この部屋の写真だった。ちょうどいま、有が立っている場所だ。窓に焦点をあてられている。
「なんでそんな写真――」
「理由はあとで。それよりちゃんと見てくれよ。この写真を撮ったとき、窓の前にはこの段ボールは置いてなかったんだ」
亘が有の足元にある段ボールを指さす。
有は写真の中央をしっかりと見た。亘の言う通りだった。吐き出し窓のサッシの近くに、箱がない。今はある。
背筋がひやりとした。嫌な汗が手のひらに浮かぶ。
「有は動かしてないよな?」
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