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「動かしてない。亘が動かしたんじゃないの? それを忘れてるだけとか――」
「違う。俺は一切ここにある物には触れてないよ」
「じゃあなんでこの部屋に入ったんだ?」
思わず責める口調になった。この部屋に入る理由が、亘にはないはずだ。
「週に一回ぐらい窓を開けるために入ってた。この写真を撮ったのは一週間前だ。段ボールの置き場所が前回入ったときと変っている気がしたから」
亘が傷ついたような顔をして、有に説明してくる。
「それ以外はなにもしてない。ここにある物が有の親御さんが残したものだってわかってるし、勝手に物色なんてしてないよ」
「べつに、そんなつもりで言ったんじゃ――」
気まずい空気が生まれ、有は焦った。
「――ごめん、きつい言い方した」
有がこの部屋に入りたくないことを、亘は察知していたのかもしれない。だから代わりに換気してくれたのだろう。彼は善意でしてくれていた。
「いいよもう。気にしてない。話を戻すけど――誰かがここに入ったのは確かだ。玄関のドアは無理やりこじ開けたような跡がない。窓も割られてないし、三階までよじ登って入ってくるのも難しいだろ。まず疑いたくなるのは合鍵を持っている人間なんだ」
「それが伯母だって?」
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