the 15th of March

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「合鍵を渡していた時期があったんだろ? その期間に複製されてた可能性がある」 「そんな――」  伯母はそんなことをする人じゃない。そう言おうとしたのに、亘の真剣な目に射すくめられ、有は口を噤んだ。 「無くなったものがないか確認したほうがいいよ」 「――そうだな」  やっとの思いで、同意の言葉を口にした。  頭が混乱していた。高校の三年間、伯母は有の一人暮らしを気に掛け、頻繁に部屋を訪れて手助けしてくれた。そんな彼女が、身内の家に無断で入って盗みを働くなんて、考えたくもなかった。  亘に促されるまま、有は段ボールの中身を確認していった。七年前にしまい込んだ物なんてすべて覚えているわけがない。何が無くなったかなんてわかるわけがない――有は半ば諦めていたが、五個目の箱を開けた瞬間、作業の手を止めて、亘と顔を見合わせた。  その箱は空っぽだった。急いで残りを開けていくと、半数は空洞の箱と化していた。  有はこの部屋に、空の段ボール箱を置いた記憶はない。  亘の言ったことは間違いじゃない。犯人が伯母だと特定するのは時期尚早だが、誰かがここに入ったことは確かだった。     
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