the 15th of March

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結局ふたりは、夕食時までずっと物置部屋の片づけを行っていた。有は思い切って、両親の荷物のほとんどを捨てることにした。残っている段ボール箱の中身は、八割が母親の衣服だ。 「どれもブランド品だな」  箱の中身を眺めていた亘が、感心したように呟いた。だが彼の口元は皮肉っぽく歪んでいた。有もそんな気分だった。  突然、人が変わったようにブランドものを買いあさっていた母親。父親もスーツに金をかけるようになっていた。 「急に金持ちになって箍(たが)が外れてたんだ」  有には、両親を庇いたい気持ちがあった。 「――一億だっけ?」 「そうだよ。年末の宝くじで」  有が中三のときだった。クリスマス前に宝くじを買った母は、見事一億を引き当てたのだ。それまで彼女は宝くじを買ったことが一度もなかった。ビギナーズラックだったのだろう。  亘にだけは、このことを大学のときに話していた。彼なら信じられると思ったからだ。 「大金持ってると怖いから、さっさと使い切るって言ってた。この家もキャッシュで買ったし」  だが、元々庶民だった母親は、質屋で換金できるような物ばかりを買っていた。有名ブランドのファッション小物や、金やプラチナを台座にしたダイヤの指輪――。そこまで思い出してハッとする。 「無い物が分かったよ。バッグと宝飾品が消えてる」 「そうか」  それ以上亘は何も言わなかった。     
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