reminiscence2『persona』

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 初めて彼女ができたので浮かれてしまい、危うく単位を取り損ねそうにもなったが、概ねリア充なキャンパスライフを満喫することができた。  そして三年に上がったとき、亘との距離が急速に縮まった。ふたりは偶然、三年の前期から始まるゼミで一緒になったのだ。  有はゼミで行われるグループワークが苦手だった。そのなかでも特に嫌だったのが、四五人に分かれて意見を出し合うディスカッションだ。積極的に自分の意見を言わないと、仲間の討論を聞いているだけで時間が終わってしまう。  数回目のディスカッションに挑んだときだった。緊張しながら、話し出すきっかけを窺っていたとき、意見を述べていた亘が、ふと有の顔を見た。 「穂村はどう思う?」  さりげなく有に話を振ってくれた。  有は慌てて、準備していた意見を口にのせた。  グループワークが終わって次の講義に向かうとき、有は亘に声をかけた。彼は当時付き合っていた彼女と一緒に歩いていたから、声をかけるのを戸惑ったが、勇気を出した。 「石動」  それほど仲が良いわけでもないのに、気が付けば呼び捨てにしていた。  振り返ってこちらを見た亘は、気にした風もなく「なに?」と聞いてくる。 「さっきはありがとう。話に入りづらかったから、助かった」     
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