ex-girlfriend

2/3

694人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
 心配と好奇心が混ざったような表情で、真紀が有の顔を見た。 「うまくいってるよ。喧嘩もしないし」  セックスがないだけだ。あとは本当にうまくいっている。 「そういえば――」  真紀が突然、思い出したように言った。声を潜めて話を続ける。 「エッチといえばさ――大学のとき、石動くんに聞かれたんだよ、わたし。穂村くんと最後までしたことあるかって」 「――へっ? なんだよその質問」 「だよねえ」 「大学のときっていつ頃? どういう経緯で?」 「四年の夏休み明けだったかな……経緯までは覚えてない」  亘の過去の行動に首を傾げたくなる。夏休み明けということは十月ぐらいだ。亘が有の自宅に遊びにくるようなった頃だが――。 「そのときは深く考えてなくて、あるよって答えちゃったんだけど。それがまずかったかも?」 「いや――それは違うだろ」  亘は付き合う相手に純潔を求めるタイプではない。彼だって女性経験は豊富なはずだ。大学の一二年のころは、彼女を途切らせたことがなかった。 「あるって答えたとき、亘はどんな反応をしたんだ?」 「そりゃそうだよなって、笑ってた」  ――笑ってた。  思いがけず、その言葉が胸に冷たく刺さった。ちょっとくらい妬いてほしかった。     
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

694人が本棚に入れています
本棚に追加