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「デートに誘うのはいつも私だし、電話かけるのも私だし、LINEも素っ気なかったし。私から連絡しなかったら自然消滅してる」
「そんなことないって」
「そういえばエッチも淡泊だったよね。誕生日は一応覚えてくれてたけど、そんなのカレンダーに登録しておけば忘れないし」
「真紀」
落ち着けよ、と言おうとしたが、真紀に睨みつけられて舌が止まった。
「ただの草食系かと思ってたけど、そうじゃなかったんだね」
今度はしみじみとした口調になり、彼女は合点がいったように頷いた。
「ライバルが男とかあり得ないから。私的に」
真紀が何を言っているのか理解できなかった。
「ライバルってなんだよ。意味わからない」
「わからないならそれでいいよ。でもね、有がこのまま私と付き合ったら、私に対して失礼なの。わかった?」
正直なところ、このとき有はわかっていなかった。真紀が言わんとしていたことを。
花火大会の日から一週間後――大学の夏休みが始まったとたん、有は自分の気持ちに気が付いた。
真紀から連絡が来なくなってもたいしてダメージを受けなかった。それなのに、大学に行かなくなってから胸にぽっかりと穴があいたような寂しさを覚えていた。
――石動に会えないから?
いや、でも、まさか。
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