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「変なこと聞いてくるなって不思議だったよ。穂村くんが実はホモで、カムフラージュでわたしと付き合ってたって勘付いてたのかな」
「茶化すなよ。今真剣に考えてんだから」
自然と厳しい声が出た。
真紀のことは可愛いと思っていたし、付き合っていたころはちゃんと好きだった。自宅によく招いて、そこで事に及んでいた。カムフラージュだなんてとんでもない。
少しムッとした表情を浮かべて、真紀がテーブルをトントンと指で叩いた。
「穂村くん、欲求不満で苛々してるんじゃないの? したいなら自分から襲っちゃえば」
それができないから悩んでいるのだ。
亘の気持ちを疑っているわけではない。自分は彼に好かれている。そう実感できている。会社から帰宅して顔を合わせたときに、夜寝る前にキスをするときに。亘の眼差しはいつも優しく、抱き寄せてくる腕は頼もしい。
――でも、寝室は別だ。
好きだけど、男の体には嫌悪感がある――亘の真意はこれなんじゃないかと、有は推測していた。
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