an aunt

4/8
前へ
/140ページ
次へ
 ぐらい、という言葉に有は引っ掛かった。ずいぶんアバウトだ。 「医療費の明細書ありますか。見せてもらってから考えます」  有はきっぱりと言った。 伯母が金銭に緩いことを、有は知っていた。彼女が若いころから定職に就かず、結婚もせず、有の祖父母に寄生して生きていたこと。祖父が亡くなったあとは、有の母に小遣いを無心をしてきたことなど――有は中学のころに、母に聞かされていた。だが、両親が死んだあと、伯母に対する認識は変わったのだ。事故後、彼女は有の未成年後見人になってくれた。きちんと財産の管理を行ってくれていたし、有が二十歳になったときは、すぐに後見人解除の手続きを取ってくれた。もともとあった両親の預貯金、二人が事故死して下りた保険金の入った通帳と印鑑を、書留で送ってくれた。  両親が必要以上に伯母を悪く言っていたのだと考えを改めたのだが。 「ああ、ちょっと待ってね」  伯母が椅子から立ち上がった。鍋の火を止めてから、引き出しのある棚を一段ずつ確認していく。遠目でも、引き出しの中はチラシやレシートといった紙類でゴチャゴチャしているのが分かる。すぐに見つかりそうにない。 「今日じゃなくても良いですから。見つかったらコピーして郵送してください」     
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

692人が本棚に入れています
本棚に追加