Doubts beget doubts.

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 気にしない振りをしていただけだ。本当は亘にどういうことか問い質したいのだ。でも鬱陶しがられるのが怖い。好きだから、自分が狭量だと思われたくない。嫌われたくない。  伯母が全くの嘘を言っているとも思えない。もしかしたら一度、亘は彼女と会っているのかもしれない。八月ではないと思うが。  一度ちゃんと話し合った方が良い。亘側にもきっと言い分があるはずだ。セックスをしない本当の理由も。  有はスマホを手に取り、亘に電話をかけた。だが、移動中で電話に出られないというメッセージが流れてくる。 『今日は早く帰れる?』  LINEでメッセージを送ってみるが、なかなか既読にならない。  亘が今朝言っていたことを思い出す。  ルーティンワークに加え、展示会やセールの準備にも駆り出されて、定時で帰るのは当分無理だと。  夕食を食べ、スマホを常備しながら洗濯物を干していると、漸く亘から返信が来た。 『今日も遅くなるから先に寝てて。今から会議だよ』  読み終えた瞬間、がっかりしたはずなのに、口元からは力が抜けた。亘から真実を聞き出す機会が延びて、安堵している自分がいる。  話し合ったところで、納得のいく結果が得られるのだろうか。自虐的な自問は、有自身を追い詰めるだけだった。  
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