divergence

2/4
前へ
/140ページ
次へ
 亘がふっと笑った。 「実はさ、有の使ってる歯磨き粉、あんまり好きじゃないんだ。においが」 「え?! そうなの?」  そんな風に思われていたなんて驚きだった。 軽くショックだ。よく朝の歯磨き後にキスをすることが多かったから。 「じゃあ、歯磨き粉変えるよ」 別に、今使っているものに拘りがあるわけではない。ドラッグストアで安売りしていたから買ったのだ。 「あ、わざわざ買わなくてもいいよ。俺のやつ使って? 有が嫌じゃなければ」 「嫌じゃないよ」  亘の言葉の端々に、有に対する気遣いが感じられる。彼の眼差しは、朝の忙しい時間でも優しく穏やかだ。 「亘、今度の休み、ちょっと話せないかな」  ゆっくり話す時間が取れるのは土日だけだ。 「どうしたの? 真面目な顔して」  亘が不思議そうに首を傾げた。 「いろいろ聞きたいことがあって」 「わかった。土曜日は休日出勤するかもしれないんだ。でも日曜日は必ず休むから」  ふたりは食卓に着き、朝食を食べ始めた。  食事中は、年末年始の休みがどれぐらい取れるか話し合った。有の会社は十二月二十八日から一月三日まで休みだった。一方亘は、大晦日まで仕事のスケジュールがぎっしり入っていた。     
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

692人が本棚に入れています
本棚に追加