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the testimony
有がロコモコ丼の蓋を開けたとたん、ハトが数羽、灰色の羽を震わせながら、こちらにジリジリと歩み寄って来た。なにか食べ物を落としてくれると期待してのことだろう。
隣に座っている真紀が嫌そうな顔をして、ベンチの上のサンドイッチを手に持った。
今日は天気が良かったので、職場近くの公園で真紀とランチをすることにした。お互い食べたいものを買って持ち寄っている。
遊具はブランコだけで、オフィス街という場所柄か、子供の姿は皆無だった。他のベンチでひとりで昼食を摂っている女性がひとりいる。距離が離れているから、こちらの話を聞かれることもない。
有は真紀に確認したいことがあって彼女をランチに誘ったのだ。
「つかぬことを聞くけどさ。夏堀さん、俺と付き合ってた時、俺の伯母に会ったことある?」
有は単刀直入に聞いた。すると、スタバのタンブラーでコーヒーを飲んでいた真紀が、ぶっと音を立てて飲み口から唇を離した。
「聞いたの? 伯母さんに?」
彼女は困惑したように眉を寄せ、ハンカチで口を拭った。
「ああ。昨日伯母から聞いたんだ。一昨年、俺の家の倉庫部屋で夏堀さんと会ったって」
「そう――」
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