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真紀が口を噤んで、なにか考えているように視線をあちこちに巡らせている。
「そのときのこと、詳しく教えてほしいんだけど」
「いいけど――とりあえず謝るわ。ごめんなさい」
有のほうに体を向けて、真紀がしっかりと腰を前に折った。数秒その姿勢をキープしたあと、態勢を元に戻した。
「勝手にあの部屋に入ってごめん」
「段ボールの箱色々見てたんだろ? 何が入ってた?」
「バッグが沢山。ヴィトンとかエルメスとか。ブランドの宝庫で凄いなあって見てたら、穂村くんの伯母さんが部屋に入って来て、ここで何してるの? って怒られちゃったの」
真紀が気まずそうにごにょごにょ話す。
「あなたこそ誰ですかって聞いたら、有の伯母ですって言われて、勝手にこの部屋に入るなってまた怒られた」
「本当にそんな風に言われたのか」
まるで家の主みたいな振る舞いではないか。伯母だって、勝手に作った合鍵で部屋に入っていたのに。
「言われたよ。まあ仕方ないけど……穂村くんが住んでるマンションって、伯母さんのものなんでしょ?」
「――は?」
真紀の言っている事がすぐには理解できなかった。
「なに? 俺のマンションが、伯母の?」
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