692人が本棚に入れています
本棚に追加
「って言ってたけど? 伯母さんの持ち家を穂村くんのご両親に貸してあげてるって言ってたよ。親が転勤で家を出たけど、穂村くんは大学が近いからそのまま居続けたって」
「ちょっと待てよ。なんだよそれ。そんなの嘘に決まってるだろ。あのマンションは俺の親のものだよ」
つい口調が強くなった。自分が怒られでもしたように、真紀が顔を強張らせた。
「本当に穂村くんのご両親のマンションなの?」
「そうだよ」
「――そうなんだ。あのマンション、すごく良いよね。都内の一等地だし、交通の便も良いし、新しいし。ご両親、いつ帰ってくるの?」
「知らないよ。話を戻すよ。あの部屋にあるもの、外に持ち出してないよな?」
さすがに「盗んだか」とは聞きづらかった。
「ええ? 私疑われてるの? 盗んでないよ、絶対!」
急にムキになって捲し立ててくる。唾まで飛んでくる。
「ってなに? あのバッグ盗まれちゃったの?」
「そうだよ。でももういい。誰が盗ったかは見当がついてるから」
伯母の一択だ。我が物顔で有が不在のとき――いるときもあったが――に部屋を出入りしていたのだ。バッグも自分の物として持ち出していたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!