the testimony

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 伯母の一連の行動を腹立たしいと感じつつも、糾弾する気にはなれなかった。怒りよりも恐れの方が強かった。彼女は罪悪感なしに、悪気なく不法侵入と窃盗に手を染めている。真紀相手に虚言まで吐いた。鍵は没収したが、まだスペアを持っているかもしれない。明日にでも業者を呼んで鍵を付け替えなくては。  頭を抱えたくなった。伯母に対しどう対応すればいいのか。警察沙汰にはしたくない。 「なんで伯母と会ったこと、俺に言ってくれなかったんだ?」  そのとき教えてくれれば、もっと早く伯母への対策をたてられたのに。 「確か私、あの日は穂村くんが寝ている間に伯母さんと一緒に家を出たんだよ。次穂村くんに会ったのって花火大会だったでしょ。伯母さんの話をするどころじゃなかったよね」  そういえばそんな日があった、と有は思い出した。目覚めたときには真紀の姿がなく、玄関の三和土に家の鍵が落ちていた。外から鍵を掛けて、新聞ポストに戻してくれていた。 「あ、もうすぐ私、昼休み終わる。帰るね」  真紀がベンチから立ち上がった。彼女は知らぬ間に昼ごはんを食べ終えていた。会話しながらもちゃんと食べているところが器用だ。有はロコモコ丼の半分も食べていなかった。 「夏堀さん、ちょっと待って」  有はもう一つ、真紀に尋ねたいことがあった。 「聞きたい事があるんだ。大学の卒業式の日、ゼミの飲み会があったよな? それに亘も参加してた?」 「参加してたよ。そんなの穂村くんが一番知ってるでしょ」     
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