cognitive psychology

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「穂村もスマホ依存症だなあ。必死にスクロールしちゃって」  隣の席から茶化すような藤崎の声が聞こえてきて、有は慌てて顔を上げた。ここが職場のデスクだということをすっかり忘れ、LINEのトークのログを必死で読んでいた。 「すみません、もう昼休終って――」 「ないよ。あと十分な」  有はほっとしてスマホの画面に視線を落とした。  三月十五日、二十三時五分。真紀との、飲み会の会費受け渡しについての会話が残っている。  ――穂村くんはあの飲み会に最後まで残ってなかったってば。だからあとから会費を貰ったんだよ。  彼女の言うことは真実だ。LINEのトーク画面がそれを証明している。飲み会に最後までいれば、会計時に幹事に金を手渡しているはずだ。あとで払うということはない。  さきほど公園で、飲み会の途中でバックレた覚えがない、と有が打ち明けると、真紀は呆れたように笑った。  ――そんなに酔ってたの? 記憶がなくなるほど。  あの日自分は飲み過ぎたのだろうか。だから飲み会での詳細――とくに亘と自分の行動を思い出すことができないのだろうか。 「藤崎さん」  無意識に有は隣にいる男を頼っていた。 「なんだよ、思いつめた顔して」     
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