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「でも、今年の三月の出来事を忘れてるんです。ゼミの飲み会であったことが全然」
話している途中で、就業再開のチャイムが鳴った。有が話を切り上げスマホを鞄に収めると、藤崎が書類の準備をしながら声をかけてきた。
「今日、仕事が終わったら時間あるか? ちょっとカウンセリングしてやるよ」
「いいんですか?」
「いいよ。万一のことがあったら困るからな。若年性認知症とかな」
怖いこと言わないでくださいよ、と返しながらも、有は怯えていた。
やっぱりおかしい。自分の記憶が。
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