counseling

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 打ち合わせ用に使う小会議室で、有は気になることを一通り藤崎に話した。購入したばかりのミネラルウォーターを呷って、腕時計を見る。もう二十時を過ぎていた。 「所々忘れてるって感じだな。一月は神社に行ったこと自体は覚えてるけど、一緒に行った相手と何を話したか忘れてるんだよな? 大したこと話さなかったからじゃないの?」  藤崎が自分のとったメモを見た。 「世間話程度じゃ昨日のことでも忘れる」 「いや――だいぶ大事なことだったみたいで」  返事をしたとたん、今朝の亘の様子を思い出した。 ――じゃあ、神社で俺が願ったことも覚えてる? そういったときの亘の顔は、期待したように口元が綻んでいた。有がすぐ反応できずにいると、亘にしては珍しくマイナスの感情を露にした。落胆、諦念、寂寥――。自分が彼を傷つけたのだと感じた。 「三月の飲み会は問題かもな。最後のゼミの飲み会だろ? いわばお別れ会だ」  藤崎がペンを回しながらこちらを見た。 「他にはないのか? 最近のことじゃなくてもいい。幼少期や少年期になにかあれば――」     
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