method of location

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 ニ〇二と書かれたピンクのドアを開けたとたん、埋め込み型の照明に照らされたピンクの壁と白い天井がパッと目に入ってきた。ベッドは白一色だが、手前にある三人掛けのカウチソファはピンクだった。「いちごみるく」というだけあって、色使いは徹底している。胸やけしそうになった。目がチカチカする。  三月十五日に亘と一緒に入ったはずの客室。だが、見覚えがない。強烈な個性を放つ部屋だ。一度入ったら忘れられないはずなのに。  ドアを閉めたあと、コートをソファの背もたれに掛け、ベッドに座った。  この部屋を訪れて、劇的に重大な何かを思い出せるなんて期待はしていなかった。だが、全く何も掠らないとなると、やっぱりガッカリする。 居酒屋からここまでの道のりも、時間をかけて歩いた。周りの風景――どぎついネオンサインを放つラブホだらけだったが――も舐めるようにして眺めた。フラッシュバックなんてものはもちろん起こらなかった。 収穫が一つもないとなると、休憩一時間分の料金も勿体ない。せめて元を取ろうと、リモコンを手に取り、大型テレビの電源を入れた。とたん、AVが流れ始め、有は吹きそうになった。     
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