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ラブホだもんな、と妙に納得してしまう。真紀と付き合っていた時に何度かラブホは利用した。一応場慣れはしている。
有はテレビをつけたまま、スプリングの効いたベッドに仰向けになって寝た。一時間休もうと思った。スマホを繰り、五十分後にアラームを設定して、ベッドのなかに入った。だが全然眠くならない。体は疲れているはずなのに、神経が高ぶっているようで、瞼を閉じると余計目が冴えてしまう。
――亘とこの部屋に入ったのは俺のはずだ。
真紀の証言と、彼女と交わしたLINEのトークの履歴、亘のコートから出てきたレシートを鑑みれば、自分以外あり得ない。
ここで何かショックなことでもあったのかだろうか。だからこの部屋で起こったことを覚えていないのだろうか。
――亘とセックスしたのか? 俺は。
わからない。自分が受け入れる側だったとしたら、体にダメージを負っているはずだ。記憶がないにしても、自分の体がおかしいと気が付くはずだ。三月十五日、もしくは翌日に。では、していないのだろうか。ふたりでラブホに入ったものの、やっぱりできなかった――その可能性のほうが高い。
「やっぱり亘は」
続きを声に出すのは苦しかった。手で自分の口を押さえる。
男の体に嫌悪感があるのかもしれない――そう考えるのが自然な気がした。
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