method of location

5/18
前へ
/140ページ
次へ
 ラブホだもんな、と妙に納得してしまう。真紀と付き合っていた時に何度かラブホは利用した。一応場慣れはしている。  有はテレビをつけたまま、スプリングの効いたベッドに仰向けになって寝た。一時間休もうと思った。スマホを繰り、五十分後にアラームを設定して、ベッドのなかに入った。だが全然眠くならない。体は疲れているはずなのに、神経が高ぶっているようで、瞼を閉じると余計目が冴えてしまう。  ――亘とこの部屋に入ったのは俺のはずだ。  真紀の証言と、彼女と交わしたLINEのトークの履歴、亘のコートから出てきたレシートを鑑みれば、自分以外あり得ない。 ここで何かショックなことでもあったのかだろうか。だからこの部屋で起こったことを覚えていないのだろうか。  ――亘とセックスしたのか? 俺は。  わからない。自分が受け入れる側だったとしたら、体にダメージを負っているはずだ。記憶がないにしても、自分の体がおかしいと気が付くはずだ。三月十五日、もしくは翌日に。では、していないのだろうか。ふたりでラブホに入ったものの、やっぱりできなかった――その可能性のほうが高い。 「やっぱり亘は」  続きを声に出すのは苦しかった。手で自分の口を押さえる。  男の体に嫌悪感があるのかもしれない――そう考えるのが自然な気がした。     
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

692人が本棚に入れています
本棚に追加