先輩の部屋

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先輩の部屋

 桐谷の部屋は五階にあった。 「どうぞ、俊」  そんな言葉とともに彼は俊を部屋に招き入れた。  玄関をくぐるとすぐダイニングキッチンがあり、冷蔵庫、オーブンレンジなどの家電があり、鍋やフライパンなどの調理道具もそろっている。  ここで、あのおいしい料理の数々を作ってくれたんだ……。  幸せの味がした手料理が思い出されて、俊の胸がきゅんと鳴った。  ダイニングキッチンの奥はリビングで、ソファとテーブルが中央に配置され、テレビとdvdレコーダーのセット、ミニコンポなどが置かれている。  ダイニングキッチンとリビングと、あともう一つ部屋がある1LDKらしい。 「そこのソファに座ってて。飲み物持ってくるから」  俊は桐谷の真意が分からず、困惑しながらソファに腰を下ろした。  思い人の部屋にいるという甘い高揚感が、どんなにごまかそうとしても、俊の心の奥底から湧き上がってくる。
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