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衝突
「桐谷先輩、こんなところにまで連れてきて、本当にいったいなんの用なんですか?」
桐谷が生活している空間、彼の香り、こんな愛おしい場所に身を置いていると、俊は復讐鬼として生きることができなくなってしまう。
ずっと犯人に復讐するためだけに生きてきたというのに……。
「大切な話があってね」
桐谷は切れ長の瞳で真っ直ぐに俊を見つめた。
「……なんですか?」
「俊、十三年前の事件の犯人への復讐を考えているなら、やめるんだ」
「なっ……」
「オレが思うに、犯人は犯行を依頼した者と実行犯の複数なんじゃないか? それくらいはもう岬で情報をもらっているんだろ? はっきり言って、おまえがどうあがいたって敵う相手じゃない」
「そんな、どうして、どうしてそんなこと先輩に言われなきゃいけないんですか?」
俊の声が震える。
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