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立ち上る煙を見ながら おばあちゃんが亡くなった時のことを思い出す。 通夜は、夏の雨の夜だった。 弟と火の番をしながら、雨の音を聞いた。 一人で暮らしていた私に おばあちゃんが亡くなったと連絡をくれたのは まだ高校生だった弟だった。 泣きながら 私に電話をくれた。 おばあちゃんが倒れたことは、父から聞いてた。 『心筋梗塞で手術は成功した』と。 すぐに帰ると言っても まだ話せる状態じゃないから、落ち着いたら また連絡する と言われて。 亡くなったと聞いた時、私はなぜか 顔が笑った。 なにをバカなことを そんなことあり得ない そう思った。 パジャマ代わりのキャミのままジーンズだけ履いて、財布をバッグに突っ込んで新幹線に乗る。 実家に着いても、どうしても(ひつぎ)に近づけなかった。 認めたくない。絶対に。 止めようもなく震えた指の爪は ターコイズブルーに塗ったままだった。 弟の部屋で、ただ煙草を吸って 通夜客が帰るのを待つ。 会いたくない。誰にも。 深夜近く。皆帰ったから、と 母に呼ばれて 二階から降りる。 棺の中を見て、足を崩れさせて泣いた。 お線香やロウソクの火が耐えないように 火の番をする。雨の音を聞きながら。 煙が天国までの道案内をする と聞いた。 『... ばあちゃんさ 孫の中で、姉ちゃんが一番かわいかったと思う』 実家を出てる間に、私の背を抜いた弟が言う。 さっき、あんなに泣いたから 気を使わせたのかな おばあちゃんが私を一番に思ってくれたのは あんたが生まれるまでよ。 あんたも愛されてた。とても。私が知ってる。 また鼻の奥がつんとして、何も言えなかった。
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