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煙草を消して、ベッドに転がる。 指を開いて、部屋の電灯を隠しながら ボルドーの爪を見た。 明日 塗り直さなくちゃ。 おばあちゃんのお葬式がすんで 一週間経って、実家から戻ってきた時 長く留守にした私を、冬人は責めた。 留守にしただけでなく 戻ってからバイトも休み続けたし、食事の支度もしなかった。 冬人の話も ロクに聞いてなかった。 『いつまでそうしてんだよ! おばあちゃん、死んだんだろ! なあ、もう死んだんだから』 『死んだ死んだ言われなくても知ってるわ!』 思わず怒鳴り返すと、冬人は 「もういい」と出て行った。 冬人が出て行くことは、しょっちゅうのことだった。何もめずらしいことじゃない。 少しのことでヘソを曲げて帰って来なくなる。 私の部屋を出て行ってる間は 他の彼女の家に泊まるか、3つ向こうの駅にある 自分の部屋で寝る。 つき合い出した19やハタチの頃は 冬人がこうして出て行く度に、泣いて引き止めてた。別れるのも嫌われるのも怖くて。 冬人は私の部屋に戻ってくると、自分の気がすむまで私に謝らせた。 まるで、王さまみたいな顔をして。
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