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授業参観の科目は国語で、作文の発表会だった。
クラスメートのみんなが、母親に向けて書いた手紙を読んだ。
先生が作文のテーマを「お母さんへの手紙」ではなく、「おうちの人への手紙」にしたのは、母親の居ない僕に配慮してのことだったのだろう。
だけど、それも全部無駄になってしまった。
僕は、作文を発表することができなかった。
みんなの前に立っても、俯くばかりで手紙を読むことができず、ついには泣き出してしまった。
「可哀想に」
教室の後ろのほうから、そう呟く声が聞こえた。
そして駆け寄ってきた先生に、「ごめんね」と謝られたことを覚えている。
きっと、僕の家庭環境を知っていて、それでも他のクラスと統一したテーマを設定したことに負い目を感じたのだろう。
結局僕は一言も言葉を発することがないまま、先生に促されて着席した。
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