父への手紙

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そのことを、あなたはきっと先生から電話で聞いたのだろう。 いつもより随分早い時間に帰宅すると、「ただいま」よりも先に、あなたは謝った。 「ごめん」 あなたは素直な人だから。 子供だった僕に対しても、嘘を吐いたり誤魔化したりしない人だから。 そして、言い訳のできない人だから。 あなたはただまっすぐに謝るだけだった。 でも、やっぱり僕はあなたに来て欲しかったし、あなたが来てくれなくてすごく悲しかったから、気持ちを抑えることができなかった。 「嘘つき!仕事抜けて来てくれるって言ったのに」 僕は涙を溜めた目でそう言い放つと、あなたの前から立ち去った。 あなたが授業参観に来なかった本当の理由を知ったのは、それから一時間ほど経った頃のことだった。
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