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「なんだか名前がいまいちなのよね~」
冬子は父親に向かって言った。
家業である和菓子屋の屋号が『すだれ』である事に、いつものようにケチをつけた。
「だいたいね、『たれ』なんて、商売するのに付けないでしょ、普通はさぁ。こんなんじゃ商売垂れ下がる一方じゃん!」
「しょうがないだろう。もうずっとこの名前で商売してるんだから、今更ナントカ堂とかナントカ本舗とかに変えられないよ」
「お父さん、何代目だか知らないけど、もうそろそろこの店も今風にチェンジしちゃったら?いっそのこと、カフェにでもしちゃえばいいのよ。一体誰なのよ、『すだれ』なんて和菓子屋始めたのはさぁ」
「ひいじいちゃんかひいひいじいちゃんだろ。俺も知らね~よ」
「ふ~ん。私は絶対にこの先『すたれる』のが目に見えてる店は継がないからね」
「そんなのおまえに期待してね~よ。おまえは好きな事やってればそれでいいさ」
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