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その日も冬子は、朝早くから小豆を炊く父親の側で、じっとその姿を見ていた。
『すだれ』の餡は、北海道十勝産の無農薬小豆に和三盆糖。
丁寧に水洗いをし、アクを抜き、煮て蒸らす。そして和三盆糖を水に溶き、小豆とともに練りながら煮る。と、極普通の工程だ。しかし、甘さは控えめで、くどくないと評判らしい。
「らしい」とは、それが冬子にとって、正直どうでもいい事だからだ。
冬子は、この『すだれ』がこの先何年続いていくのかどうでもいいと思っている。どうせ自分には継ぐ意思もないし、店を続けたいなら誰か養子でも取ってくれと、思っていた。
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