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その夜冬子は、指折り数えながら、自分の小学校卒業から高校卒業までの履歴をようやく記入した。
しかし、自分には職歴を書く必要がない事に、その時になって愕然とした。
「私の年齢で職歴なしって、つまり私はニートってヤツ?……あっ!『すだれ』を書けばいいんだ」
冬子はこの時だけは家業に感謝をし、職歴に『すだれ』和菓子製造、販売と記入した。
「製造なんかしてないけどね。ま、いいや」
ついでに、趣味欄には「和菓子を食べる事」
これも嘘。
そして、応募理由欄には「和菓子の他にも色々なお菓子について学びたい。接客の仕方を一から学び直したい」といった主旨のことをテキトーに記入した。
希望勤務日時は、慣れるまでは月・水・金の週三日、オープン準備の九時半からランチタイム後の片付けの三時までにした。
たとえ、一日四時間から勤務可とはいえ、ランチタイムの途中で仕事を上がることなど不可能だなと、冬子は思った。
最後に写真を貼り付けて、完成した履歴書を封筒に入れ、バッグに放り込んだ。
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