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と言いかけた時、私は悠斗の左手の薬指が見えた。
そこには結婚指輪がはめられていた。
悠斗「何? 先生」
風吹「はぁー。あーあー。まさかあなたに逢ってしまうなんて。神様は私に対して意地悪をしているのかしら。あなたのおかげで私はすべてをなくしてしまった。29年間、地に足をつけて作ってきたものが。それで夫も子供も友達も、仕事も全部なくしてしまった。全部あなたのせい! 確かに私も子供の言う事に惑わされたのが悪いけど、あなたは私の疫病神よぉ! 」
悠斗「なんだよそれぇ! 」
風吹は立ち上がり、備え付けの電話でロビーのスタッフに電話した。
風吹「お客様より、チェンジのオーダーです。お願いします」
ガチャ
風吹「それでは失礼します」
悠斗「ちょっと待てよぉ! 」
悠斗は風吹の腕をつかみ、そのまま壁に追い込んだ。
悠斗「なんだそれ! 俺は疫病神って! 俺がどんな想いで、先生を・・・先生を忘れようとしようと思ったかぁ! 」
・・・・辛い。あなたのその苦しさが温度として伝わってくる。今すぐ抱きしめたい。でもそれはダメ。薬指に見える幸せを崩していはいけない。
私に壁ドンしたその手をつかみ、彼の腰元に戻した。
風吹「お幸せに。もうこんな所には来ない事! 」
と言って、私は部屋を出て行った。
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