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「たとえ、夢でも。」
「今日は特別な日だから、帰りに外食しよっ!」
「え、あぁ、うん」
詩織の突拍子のない提案に、
俺は思わず頷いた。
「もうお店予約してあるから!ゼミ終わったら連絡するね」
「あ、ああ」
「じゃっ!また後で」
彼女は白い歯を覗かせ、なぜか敬礼のポーズをとる。そして膝丈より少し短かいスカートを翻し、ピュウっと猫のように去っていった。
彼女が見えなくなったところで、俺は頭を抱えこむ。
「今日って…何の日だ……?」
同い年の詩織と付き合って2年半。
大学3年目の冬にして、その危機は訪れた。
男という生き物は「記念日」に疎い。
それが原因で喧嘩になるカップルも決して少なくないだろう。
とりあえず考えよう。
まだ昼だ、ゼミが終わる夕方まで時間はある。
俺は大学会館内の椅子に座り、
「考える人」のポーズをとった。
考えられる可能性その1。
「誕生日」
……ない。それはない。
俺は6月生まれ、彼女は7月生まれだ。
そして今は1月。さすがに早いだろう。
そもそも「誕生日は必ず当日にお祝いしよう」と、彼女は付き合い始めに言ったのだ。それから俺らは、互いの誕生日は必ず当日にお祝いしている。よって誕生日祝いではない。
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