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そうやって時間をかけて頑張っていたらね、思いもよらないところで叶ったりするんだよ。私はそれが、たまたま懸賞で当たったカボチャのプリンだった」
だからね、と詩織は続ける。
「夢があって、念い続けていたら、必ず実現するの。そこに正しい努力があって、情熱と時間をかけたら、ちゃんと叶うの。神さまは、絶対に見てくれている。
正登の努力も、ちゃんと見ていたってことだよ。そうでなければ、こんなチャンスだって訪れないんだから。
……ねぇ、知ってる?正登。
チャンスの女神さまって、前髪しかないんだって」
通り過ぎるのは一瞬。通りすぎてから掴もうと思って振り返っても遅いんだよ。間に合わないんだよ。そう語る彼女の瞳には、確かに俺が映っている。
「……小田切さん。君は10年も前から、毎回『Victory』のコンテストに応募してくれていたね」
「え?」
俺は目を見開いた。
「今回、会う前に君のことを少し調べさせてもらってわかったよ。君は何度も諦めずに挑戦し続けていたんだね。そんな君を、僕は少しでも応援したいと思ったんだ」
「……」
「君は、どうしたい?」
男が俺に訊ねる。
俺は再度、詩織をみた。詩織は背中を押すように、強く優しく頷いた。そうして微笑んで、言った。
「大丈夫。必ず」
……そうか。
本当だ。
本当にそうなんだな。
勝利の女神は、すぐ隣にいてくれた。
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