「たとえ、夢でも。」

12/15
前へ
/15ページ
次へ
そうやって時間をかけて頑張っていたらね、思いもよらないところで叶ったりするんだよ。私はそれが、たまたま懸賞で当たったカボチャのプリンだった」 だからね、と詩織は続ける。 「夢があって、念い続けていたら、必ず実現するの。そこに正しい努力があって、情熱と時間をかけたら、ちゃんと叶うの。神さまは、絶対に見てくれている。 正登の努力も、ちゃんと見ていたってことだよ。そうでなければ、こんなチャンスだって訪れないんだから。 ……ねぇ、知ってる?正登。 チャンスの女神さまって、前髪しかないんだって」 通り過ぎるのは一瞬。通りすぎてから掴もうと思って振り返っても遅いんだよ。間に合わないんだよ。そう語る彼女の瞳には、確かに俺が映っている。 「……小田切さん。君は10年も前から、毎回『Victory』のコンテストに応募してくれていたね」 「え?」 俺は目を見開いた。 「今回、会う前に君のことを少し調べさせてもらってわかったよ。君は何度も諦めずに挑戦し続けていたんだね。そんな君を、僕は少しでも応援したいと思ったんだ」 「……」 「君は、どうしたい?」 男が俺に訊ねる。 俺は再度、詩織をみた。詩織は背中を押すように、強く優しく頷いた。そうして微笑んで、言った。 「大丈夫。必ず」 ……そうか。 本当だ。 本当にそうなんだな。 勝利の女神は、すぐ隣にいてくれた。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加