「たとえ、夢でも。」

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ここまで説明して、お気付きだろうか。 そう、考えられる可能性その2。 「交際記念日」 これも同時になくなることになる。 交際記念日=俺の誕生日であり、お祝いは毎年それに合わせているのだ。 発想を変えて、考えられる可能性その3。 「懸賞が当たった」 俺らが所属するのは「多趣味サークル」…つまり当然、彼女にも趣味がある。 詩織の趣味、それは「懸賞に応募すること」だ。 暇を持て余した主婦か!と、突っ込みたいところだが、それには彼女なりの理由があった。 詩織の家庭は、もともと裕福な方ではない。幼いころ父を事故で亡くし、母親が一人で働きながら、詩織と詩織の弟を育てていたからだ。 詩織は色んなものを我慢した。母親が一生懸命なのもよく解っていたから、不満には思わなかった。けれど、弟が「お菓子を食べたい」「おもちゃがほしい」と、年齢相応の要求を控えめに口にしては我慢する姿は、見ていられなかったという。 そこでスーパーに置いてあった懸賞の応募用紙をみて、詩織は「これだ」と閃いたそうだ。 弟に美味しいお菓子を与えたい一心で、ちょっと高級なカボチャのプリンの懸賞に応募した。すると見事に当たったのだ。 プリンは9個入りで、一人3個ずつ食べた。母と弟の笑顔を眺めながら食べたプリンは最高だったと、詩織は今でもよく嬉しそうに語る。
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