「たとえ、夢でも。」

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うわあああ! 俺は脳内で悲鳴を上げた。 嫌だ、そんなの絶対嫌だ。 俺はもう詩織なしでは生きられないのだ。 ……けれど。 よく考えれば、それも必然なのかもしれない。 こんな漫画オタクと付き合っていたって、詩織にはなんのメリットもないだろう。 そもそも詩織がなぜ俺と付き合うなどと言い出したのか、俺は知らない。 何度か理由を訊ねたが、詩織は「えっ?それってそんなに重要?」と笑ってはぐらかすのだ。極めて重要だよ!と思うが、あまりしつこくても嫌われると思い訊くのを諦めた。 2年半前までの俺は、彼女をつくるのが夢だった。 憧れの、二次元ではなく三次元の、俺だけの彼女。18年間ずっと恋い焦がれ、待ち続けた俺の前に、彗星のように突然現れたのが詩織だった。 ……でもやっぱり、夢は夢。いつか覚めるのが関の山だ。 付き合って2年半。 いい加減呆れて目が覚めたか、他に好きな男でもできたか。 いずれにせよ、詩織の言うとおり今日は特別な日になるだろう。 俺はこれから、フラレるんだから。
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