「たとえ、夢でも。」

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「初めまして」 30代くらいのイケメンなその男は、余裕の表情を浮かべながら俺に微笑んだ。どうやら俺はフラレるどころか、新しい相手まで紹介されるらしい。 「は…じめまして」 「よく来たね~正登!こっち座って座って」 詩織に促され、詩織の隣に座る。 って……ん?これ、座る位置おかしくないか?どうしてフラレるはずの俺が詩織の隣に座るんだ。……ああ、そうか。俺は途中で追い返されるということか。あとは残る2人で向かい合い、幸せな時間を満喫するっていうことね。ますます惨めな気分になる。 「君が小田切正登くんだね」 そんな俺をよそに、男はやはり笑顔だ。スマートで格好いい。 「そうですけど……」 何を言われるのだろうか。もう詩織に近づくな、連絡をとるなとか?はたまた気持ち悪い漫画オタクはとっとと失せろ、とか? 何を言われたって、別に構わない。俺は詩織を失う時点で、残されるのはせいぜい漫画くらいだ。下らないプライドなどは、とうの昔に捨てている。 しかし、男が発した言葉は、俺が予想していたものと全く違っていた。 「君……才能あるよ!」
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