「たとえ、夢でも。」

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「……はあっ?」 俺は目を点にした。 キミ、サイノウアルヨ。どういう意味だ。まったく頭に入って来ない。 「申し遅れました。僕はこういう者でして」 男がスッと名刺を差し出してくる。俺は震える手で受け取る。男の名前など全く目に入らなかった。その上に書かれている情報の方が重要だったからだ。 「イ……インターネットコミック、Triumph(トリンプ)編集担当……」 「Triumph」とは和訳すると「Victory」と同じく「勝利」という意味で、漫画オタク界では有名な漫画サイトだ。サブタイトルは「少年に夢と感動を」。俺も大好きなサイトで、隙間時間をみつけてはよく閲覧している。 「このサイトって……もしかして」 「そう。月刊漫画誌『Victory』を発刊する会社の子会社が運営している。最近では、『Triumph』で小さな実績を積み重ねてから『Victory』で再デビューを果たす若手漫画家も少なくない」 「……」 「そこで、君の漫画を読ませてもらったんだけれど」 「ちょ…ちょっと待ってください、どうやって俺の漫画を読んだんですか。俺はTriumphに作品を出した覚えはありません」 「え?」 男は目を丸くした。     
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