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第一章〔羽の生えたヤモリ〕
「浦島太郎」「桃太郎」「金太郎」 「一寸法師…」は違うか。
とにかく、むかし話に出てくる有名人には「太郎」がつく名前が多い。
だからといって、「太郎」という名前を持っていれば、強く、立派になれるわけでもない。
そう思っていた。
彼女に出会うまでは…
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「タロン、なるべく早く会いに来てね。じゃないと私、おばあちゃんになっちゃう…」
ミウは、大きな目に涙を溜めて、僕を見つめた。溢れそうになる涙を必死にこらえながら笑顔を作る姿を、僕は決して忘れないだろう。
大勢の人がいる中、その言葉の本当の意味を知っているのは、僕とミウだけの2人だけだった…
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僕がその生物に出会ったのは、学校帰りのことだった。
いつもの道を、いつものように帰っていると、ふと、頭の上を横切る物体があった。
「なんだ?」と思い、上を見ると、なにやら黒い物が飛んでいた。
鳥とは違い、ゆっくりと羽ばたきもせず、まるで浮いてるように見えた。僕は、「コウモリか?」と思ったが、少し違った。
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