第一章〔羽の生えたヤモリ〕

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夕暮れ時に、よくコウモリは飛んでいたが、コウモリの機敏な動きとは違い、羽を動かさず、グライダーのように滑空していたのだ。 「まさか!?ムササビ?いや、こんな住宅街にムササビが住んでいるわけがない。」 僕の住んでいる所は、都会でないにしろ、田舎というほどでもない、住宅が建ち並び、ちょっとした住宅街である。確かに、山は近くにあるが、ムササビを見たという話は聞いたことがない。 いろいろと考えながら見ていると、その生物はゆっくりと僕の4~5メートル先に地面に貼り付くように着地した。 その生物の体は白っぽく、頭はどう見ても「ヤモリ」だった。 飛んでる時に、黒っぽく見えたのは、どうやら逆光のせいだったみたいだ。 体長もヤモリを少し大きくしたぐらいで、ちょうど手の平と同じくらいに思えた。 しかし、ヤモリとは決定的に違う所があった。 それは手から足にかけての大きな幕のような物だ、その幕のような物は足から尻尾にかけても付いてるようだ。 僕は、初めて見る生物にビックリしたが、もっと近くで見たいという衝動にかられ、じりじりと近づいて行った。 あわよくば、捕まえたいと思っていたのだ。 ゆっくりと近づいたが、その足は、ピタッと止まった。 その生物と目が合ったからだ。というより、目が合ったような気がしただけなのかもしれない。     
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