第五章〔イブレドの宿〕

4/16
534人が本棚に入れています
本棚に追加
/684ページ
「いいから、いいから、こっち、こっち。」 僕は、女の子に引かれるまま、町外れのさらに奥について行った。すると、 「ここ、ここ、あたしの家、ここなの。」 女の子が指差した先には「イブレドの宿」の看板が掲げられていた。 「宿?お嬢ちゃんの家、宿屋なんだ? いいの?泊まっても?部屋は空いてるの?」 僕は嬉しさのあまり、一気に質問してしまった。 「いいから、いいから。」 僕は、女の子に押されるがまま、宿屋に入った。 すると、女の子が大きな声で、 「お父さん!お父さん!!お客さん連れて来たよ。お父さんってば!」 すると奥から、のっそりと男の人が出て来た。 「ほらほら、お父さん、お客さんだよ。」 「あ~、客だ~…?」 すると、その男性は僕を睨むと、 「あ~、金ならね~よ。何回来ても返せないもんは返せね~。」 どうやら、借金取りと間違えてるようだ。 「違うよ、お父さん!お客さんだよ!お客さん!」 「ん?客?こんなみすぼらしい宿に泊まるなんて奴はろくでもねえ奴だ。帰れ、帰れ。」 僕は、この宿を逃したら、野宿決定だったので、ダメもとでお願いしてみた。     
/684ページ

最初のコメントを投稿しよう!