第二章 教会の仕事

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 街へ出たブッシュは、まずはこの街に有る教会併設の図書館へ向かった。その図書館はいわゆる庶民が住む区画に有る教会の敷地内に建てられていて、神父の許可を貰えば自由に本が閲覧できる。  教会を訪れるのなら、いつもの道化師の服は訝しがられるだろうと、一般人と変わらない服装をしている。これで不審がられたらその時はその時だ。  街を歩き教会に着くと、一通り建物の周りを回ってどこに人が居るかを確かめる。すると、聖堂の中に人の気配を感じたので、鼻白みながらも中へと入る。すると、中には箒を持って掃除をしているひとりの男性がいた。  ブッシュが声を掛ける。 「お掃除中失礼します。神父……様はどこにいらっしゃいますか?」 すると、箒を持った男性がブッシュの方を向き、にこりと笑ってこう答えた。 「私がこの教会の神父です。 普段お見かけしない方ですが、どの様なご用件でしょう?」  どうやら不審がってはいないようだ。そう思ったブッシュは、この教会併設の図書館を見たいと伝える。すると、神父はもちろん構いませんよと、図書館へと案内する。  聖堂から出てすぐ近くにある、聖堂よりも少し小さい建物。そこが図書館のようだった。図書館の扉を開くと、薄暗いけれどもよく手入れされている、机と本棚が並ぶ空間が広がっていた。 「なにか、お探しの本がありましたら、お手伝いいたしますけれど」  神父はそう言うけれども、ブッシュは少し考えてから、あまり深いことは詮索されたくないと、手助けを断ることにした。 「いえ、結構です。自分で探しますので」 「わかりました。では、用事が済みましたらまたお声がけ下さい。 その頃には宿舎の方に居ますので」 「はい。わざわざありがとうございます」  短いやりとりのあと、神父が去ってから、ブッシュは魔女裁判に関する記録を探し始めた。
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