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本当は、おじさんが起きている間に、「ありがとう」と言いたかった。
でも、女の子は怖かったのだ。人間の姿になれるという、自分の正体を教えることが…。
他の自分と同じような動物の中には、人間として生きることを選んでこの町に住んでいるものもいる。しかし、誰もが正体を隠してだ。
__バレたら見せ物にされるだろう。
__いやいや、きっと八つ裂きにされて食べられてしまう。
林に住んでいた動物達が不吉な噂をしているところを、度々耳にしていた。
今のところ「そうなった」と言う話は聞いたことがなかったけれど、それでも不安は拭えない。
「おじさん、私のこと知ったら……」
きらいになっちゃうのかな?
言ってしまえば現実になりそうで……。
女の子は、言葉を唇にのせる代わりに、ぎゅっと服の胸元辺りを握りしめた。
気がつくと、雪がまた少し降り出している。
__雪が止むまでここにいなさい。
おじさんとは、もうしばらく一緒にいることになりそうだ。
「雪が、やむまで……なんだよね」
女の子は、ガラス越しに広がる真っ暗な空を見つめた。
その横顔は、どこか悲しそうだった。
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