ユメ。

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 「今日は、特別な日だ」  無意識のうちにそう言っていた。寝起きの僕は目をこすった。  重たい瞼を無理やり開けると、神々しい白い光が網膜にしみた。少し痛い。けれど、この場にいないあの子が目の前にいるかのようで、少し嬉しい。  自然と頬が緩み、目尻が下がる。  僕がどうしてこんなにも変態チックにほころんでいるのかというと、理由は夢だ。  好きなあの子がついに夢に登場!したからだ。  内容ははっきりと覚えていないが、ザックリとは覚えている。夢とはそういうものだ。  この日僕が見た夢はこうだ。  いつもみたく高校へと登校中、目の前にアヒルの親子が列を作りながら道を横断していた。その光景に温かな気持ちを抱いた僕は、パシャりと写真を撮った。  バイバイ、とアヒルの親子に手を振ってから、僕は再び高校へと向かった。  その後はかなりあやふやなため登場順は不明ではあるが、このようなシーンがあった。  『トマトを丸かじりする梅干しお化け』。多分、共食いに失敗したのだろう。  『カメラ小僧に扮したマスコミ各社、それを振り切るかのようにランプウェイをランウェイでランナウェイする女装した総理大臣』。昨夜のニュース映像を夢の中で勝手に加工してしまったようだ。風刺ある新聞コラムの絵のようなだ。  『アシカ同士がボクシングをするというなんとも世にも奇妙な、アシカのショー』。覚えてはいないが、どちらかのアシカは燃え尽きてしまったのだろうか?少しばかり結末が気になる。  『マフィアのボスが、手下にやたらと自動販売機で缶コーヒーを買わせている光景』。仲間への差し入れなのだろうか?それとも、単にコーヒーが大好きなボスなのだろうか?今となっては不明だ。もちろん架空なので殺されても大丈夫。  そんな夢のシメに登場したのが、大好きなあの子だった。  校門に入ろうとした瞬間、背後から「おはよう」と好きな声がした。僕はスローモーションのごとく振り返った。  そこで目が覚めた。  そして今に至る。  身支度を終えた僕は、この日見た夢の結び部分だけをリフレインさせ、家を出た。  自転車で走行中もあの子ことをひたすら無心で考えた。もはや妄想だ。  校門が見えたので、僕は自転車から降りた。  その時、「おはよう」と心地良い声がした。振り返ればあの子がいた。  夢が正夢になった。  「今日は特別な日だ」僕は口にした。
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